小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版

大幅アップデートの最新版登場!

編 集 日本耳科学会 / 日本小児耳鼻咽喉科学会 / 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
定 価 2,860円
(2,600円+税)
発行日 2024/05/17
ISBN 978-4-307-37139-1

B5判・120頁・図数:4枚・カラー図数:2枚

在庫状況 なし

6年ぶりの改訂となる2024年版では、以下多くのアップデートがなされています。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)のエビデンスの強化や、従来からの抗菌薬適正使用に基づいた一部抗菌薬の用量・選択候補薬の見直し、軽症・中等症・重症のアルゴリズムを合体した「アルゴリズムのまとめ」の追加、重症度判定などの参考用の鼓膜画像の更新など、本ガイドラインの「中耳炎診療の基本を伝える」使命に則った大改訂版となりました。

2024 年版 序(第5 版)
2006 年版 序(初版)

第1 章 作成の経緯と概要
1.要約
2.作成者
3.資金提供者・スポンサー
4.作成の背景および沿革
 1)抗菌薬治療の変遷
 2)本ガイドラインの沿革
5.作成目的ならびに目標
6.利用者
7.対象
8.急性中耳炎の定義
9.本邦における小児急性中耳炎難治化の細菌学的背景と現況
 1)小児急性中耳炎症例からの検出菌について
 2)肺炎球菌とインフルエンザ菌の薬剤感受性成績
10.エビデンスの収集
 1)使用したデータベース
 2)検索期間
 3)採択基準
 4)採択法
11.推奨および推奨度の決定基準
 1)エビデンスの質
 2)推奨の強さ
 3)エビデンスと推奨の表示法
12.エビデンス統合のための手法
13.リリース前のレビュー
14.更新の計画
15.推奨および理由説明
16.患者の希望
17.治療アルゴリズム
18.実施における検討事項

第2 章 Clinical Questions(CQ)
1.診断・検査法
 CQ 1-1>急性中耳炎はどのような状態のときに診断されるか
 CQ 1-2>小児急性中耳炎の診断に問診は必要か
 CQ 1-3>急性中耳炎の診断にティンパノメトリーは有用か
 CQ 1-4>急性中耳炎の重症度はどのようにして判定されるか
 CQ 1-5>反復性中耳炎はどのような状態のときに診断されるか
2.予防
 CQ 2-1> 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)は小児急性中耳炎の予防に有効か
3.治療
 CQ 3-1>急性中耳炎に抗菌薬を使用する場合に何を使用するか
 CQ 3-2>急性中耳炎の鎮痛に抗菌薬は有効か
 CQ 3-3>抗菌薬の投与期間はどのくらいが適切か
 CQ 3-4> 軽症の急性中耳炎の治療として、抗菌薬非投与は妥当か
 CQ 3-5>鼓膜切開はどのような症例に適応となるか
 CQ 3-6>点耳薬は急性中耳炎に有効か
 CQ 3-7>抗ヒスタミン薬は急性中耳炎に有効か
 CQ 3-8>鼻処置は急性中耳炎に有効か
 CQ 3-9>反復性中耳炎に対して鼓膜換気チューブは有効か
 CQ 3-10>反復性中耳炎に対して漢方薬は有効か
 CQ 3-11>反復性中耳炎に対して免疫グロブリン製剤は有効か
4. 小児急性中耳炎症例の治療アルゴリズム

第3 章 参考資料
1.用語の定義と解説
 1)難治性中耳炎(難治性急性中耳炎)refractory acute otitis media
 2)遷延性中耳炎(遷延性急性中耳炎)persistent acute otitis media
 3)反復性中耳炎(反復性急性中耳炎)recurrent acute otitis media
 4)再燃 relapse
 5)再発 recurrence
2.薬剤感受性による肺炎球菌の分類
3.薬剤感受性によるインフルエンザ菌の分類
4.細菌学的検査
 1)意義
 2)検体採取
 3)検体をすぐ提出できない時はどうするか?
 4)グラム染色
 5)培養検査で何がいつ頃わかるのか?
 6)薬剤感受性試験
 7)迅速抗原検査
5.抗菌薬略号と一般名一覧

索引

巻末カラー
小児急性中耳炎症例の治療アルゴリズム(2024 年版)
鼓膜所見
急性中耳炎診療スコアシート(2024 年版)
2024年版 序

 『小児急性中耳炎診療ガイドライン』が5代目として生まれ変わりました。初版である2006 年版から20年近くを経た今日に至っても、正しい診断と適切な治療によって、急性中耳炎に罹患した小児患者をできるだけ速やかに治癒に導く、という本ガイドラインの目的に変化はありません。しかし、小児急性中耳炎を取り巻く環境は徐々に、また時に大きく変化してきました。2006年版が作成されたのは、耐性菌の増加に起因する中耳炎の難治化に、日本中がもがき苦しんだ時代でした。診療の基本戦略、すなわち(1)抗菌薬を必要とする症例を選別し、(2)ペニシリン系抗菌薬を第1選択とする方法は現在も決して色褪せることはありません。むしろ、2016年に発表された薬剤耐性(AMR)アクションプランは、ガイドラインの正当性を改めて強く印象づけました。本ガイドラインを特徴づける(3)第1選択薬の治療効果を評価し、必要があれば第2、第3選択薬に切り替えるという戦略は、急性中耳炎の原因菌が1つに定まらないという背景からの必然であり、AMR対策推進を目的として発表された「抗微生物薬適正使用の手引」にも引用されているのはご存知のとおりです。
 2024年版では、いくつかのエビデンスの強化を試みました。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)は、難治化の解消に大きく貢献しました。システマティック・レビューの手法を用い、現時点での推奨をお示ししました。本ガイドライン自体も抗菌薬の適正使用の促進を通じて、原因菌の耐性状況の改善に大きな役割を果たしてきました。この耐性状況の推移を最新のデータと共にお示しします。また、一部の抗菌薬の用量、選択候補薬を見直しました。これは、抗菌薬の適正使用をより分かりやすく、リーゾナブルに表現するための試みです。
 コロナ禍を経て難治例を診る機会は一時的に減少しましたが、5類移行後は状況が戻りつつあります。この過程を目にすると、どんな時代状況にあっても、中耳炎診療の基本を維持する重要性に改めて気付かされます。そして、これを伝えることは本ガイドラインの重要な役割であると考えています。
 とはいえ20 年の時は長く、難治化時代をまったく知らないユーザーが多くなってきました。2024 年版では、軽症、中等症、重症のアルゴリズム以外に、これらを1つに合体した「アルゴリズムのまとめ」をご用意しました。ガイドラインの考え方のエッセンスが詰まっていますので、初学者にとっても、ベテランユーザーにとってもガイドラインの理解と利用が容易になると期待しています。もちろん、従来の重症度に応じたアルゴリズムには、詳細な内容が盛り込まれています。あわせてご利用ください。さらに忘れてならないのは、鼓膜の写真を初版以来初めてアップデートしました。小児急性中耳炎診療に携わるすべての医療者に、2024年版を手にとっていただける理由が一つ加わったのではないでしょうか。
 最後になりましたが、2024年版の作成にご協力頂いたすべての関係者に心から感謝の意を表します。

2024年5月15日
小児急性中耳炎診療ガイドライン作成委員会委員長
林 達哉